「なぜ恋愛では、男性ばかりが頑張る構図が当たり前になっているのか?」
その答えは、結婚後の男女の幸福度の変化にあります。
結論から言えば、男性は結婚後に幸福度が上昇し、女性は低下する傾向があるため、恋愛のスタート地点で女性が慎重になるのはごく自然なこと。
だからこそ、「楽しませてくれる」「将来が期待できそう」と感じさせる男性が選ばれやすいのです。
「選ぶ側」になる女性のリスクと覚悟
恋愛の場面では、――。そんな役回りが当然とされることが多いですよね。
一方で、女性はアプローチされる側。返信ひとつ返さない、あるいは受け身の態度をとることもあるかもしれません。
この構造には明確な理由があります。
恋愛の熱量は、付き合い始めの2〜3カ月がピーク。その後は落ち着き、やがて「倦怠期」が訪れます。
そして、結婚後に待っているのは、男性の幸福度は上昇しやすく、女性は下がりやすいという現実。
つまり、女性にとって「誰を選ぶか」は、将来の幸福を左右する極めて重大な選択。
軽々しく付き合えないし、見極めには時間も覚悟も必要です。
だからこそ男性には、「なぜ自分ばかり頑張らなきゃいけないのか」と感じる前に、
「女性が背負っている未来へのリスクと責任」を、少し想像してみてほしいのです。
結婚は男性にとって「健康で幸せ」だが、女性には…?
「結婚すれば人は幸せになれるのか?」
かつて“当たり前”だった結婚も、今や「する/しないを選ぶ時代」。
厚労省の調査によると、50歳時の未婚率は1980年の約2.6%(男性)→2020年には約28%にまで上昇。
1980年の未婚割合:男性が約2.6%、女性は約4.5%
2020年の未婚割合:男性が約28%、女性は約18%。
一方で、結婚の幸福度には性別による明確な違いが存在します。
カナダのトロント大学(University of Toronto)の研究によれば、既婚男性は未婚男性の2倍以上の幸福度と健康状態を示しました。しかし女性では、既婚と未婚の差はほとんど見られず、むしろ「独身のほうが幸せ」とする見方もあります。
未婚の男性は健康にあまり気を遣えていない傾向があり、未婚の男性は、一般的に健康状態が最も悪いことが分かりました。結婚した夫婦は、禁煙や定期的な運動など、健康に良い行動をとったり維持したりするようお互いに励まし合っているのかもしれません。
幸福度の“タイミング”にも男女差がある
ペンシルバニア州立大学とブリガムヤング大学の共同調査では、長く結婚生活を続けた夫婦の幸福度の推移について、興味深い結果が出ています。
男性は結婚直後から幸福度が高く、以後も比較的高水準を維持。
女性は結婚直後から25年ほど、幸福度が50%未満を推移し、30年近く経ってようやく上昇に転じる。
つまり、男性は結婚してすぐに恩恵を受ける一方で、女性は「長い年月をかけて、ようやく幸せになっていく」構図が浮かび上がるのです。
だからこそ、25年後の将来性などから幸せを追うより、見た目のいい人や楽しい人と過ごすことを考え、「この瞬間の楽しさ」や「今楽しいかどうか」で動きます。
最も幸せなのは未婚女性? データが語る意外な事実
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのポール・ドラン教授は、著書『Happy Ever After』の中でこう述べています。
「最も健康で幸せなのは、未婚で子どものいない女性だ」
なぜかというと、男性は結婚によって生活に「落ち着き」を得て、健康習慣も身につきやすくなり、寿命も延びる傾向にあるのに対し、女性は結婚によって独身よりも身体的、精神的健康を損なうリスクが高くなる可能性があるからです。
世界価値観調査の結果でも、未婚女性の幸福度が最も高いのは日本というデータがあります。
女性の中で減少している国は、日本を含めても数ヵ国しかありません。
幸福度の観点からは、女性は結婚する前の方が幸福度が高いようです。
逆に日本の未婚男性の幸福度は、調査対象25カ国中で最低レベル。特に「恋人が一度もいない」男性の幸福度が著しく低いことも明らかになっています。
つまり、男性は結婚によって幸福度が上がりやすいが、女性は独身の方が幸福度が高いという、明確な傾向が見て取れるのです。
恋愛は“始まり”にすぎない──幸せな関係を築くために大切なこと
恋愛は、ドキドキや高揚感に満ちた“始まり”にすぎません。
女性側では、付き合ってみると「優しいし悪くはないけど、なんか違う」「付き合う前はすごくマメだったのに…」と、違和感を覚えることもあるでしょう。価値観や相性のズレは、関係が深まって初めて見えてくるものです。
もちろん、付き合うことはゴールではありません。そして「結婚すれば幸せになれる」とも限らないのです。
本当の意味で幸せになる一歩は、お互いに向き合い、関係を育て続ける努力が必要です。
大切なのは、恋の熱が落ち着いたその先に――どう信頼を築き、安心できる絆へと育てていけるか。
その積み重ねこそが、“続く愛”のカギなのです。
ドーパミン的愛とオキシトシン的愛
「愛」には2種類あるとされています。
それが、「ドーパミン的愛情」と「オキシトシン的愛情」です。
ドーパミン的愛情:熱愛、情熱的な愛。高揚感、興奮、ドキドキ感がある。「もっと会いたい」「もっと愛してほしい」と、相手に「もっと」を求める。いわば、「求める愛」です。
オキシトシン的愛情:友愛、慈愛といった愛情で、リラックス、安らぎ、安心感、信頼感をもたらしてくれます。一緒にいるだけで十分という満足感、満たされる愛です。
付き合い始めはドーパミン的愛情から始まり、それを時間とともにオキシトシン的愛情へと育てていけるかどうかが、愛を“永続”させる鍵になります。
「適度な距離感」が重要
いくら愛し合って結婚したからといって、何もかも分かり合えるわけではありません。
むしろ、結婚後こそ「距離感」や「努力」が大切になります。
・相手のプライベートを尊重する
・欠点を受け入れる
・互いを認め合い、支え合う
そういった“歩み寄り”があってこそ、「あなたといると幸せ」「ありがとう」という気持ちが生まれ、オキシトシン的なつながりが深まっていきます。
逆に、「あれやってほしい」「どうして○○してくれないの」と、「自分が自分が」モードになって、相手への要求だけが増えていくと、夫婦関係は危ういものになっていきます。
結婚を「ゴール」と考えてはいけない
独身の人たちは、「結婚はゴール」という認識の人が多いはずです。実際に、「結婚」のことを「ゴールイン」と言ったりもします。しかし、それは完全に間違いです。
結婚は「ゴール」ではありません。結婚は「試練」です。あるいは、結婚とは「振り出しに戻る」ことなのです。
それまで「恋人関係」で積み上げた「関係性」「愛情」「経験値」などが、「結婚」というイベントによって――つまり「夫婦関係」になったときに――どういうわけか、全てリセットされてしまいます。完全に振り出しに戻るような状態です。
結婚した人は、「そうだよね」とわかると思います。完全に振り出しに戻る状態で、もう一度、夫婦という関係をゼロから構築していく――それが結婚生活、夫婦生活です。
その中で、いろいろと大変なことも起こるし、楽しいことも起こります。つまり、「試練」と言ったのは、「苦しい」「つらい」「たいへん」を夫婦で乗り越えることで、自己成長しながら、人生の階段を昇っていくということ。
恋人時代のパラメーターは結婚後には引き継がれない
ロールプレイングゲーム(RPG)を例に説明しましょう。「ドラクエ(ドラゴンクエスト)1」のゲームをクリアします。その続編の「ドラクエ2」を始めますが、「ドラクエ1」の経験値、レベル、装備などは、「ドラクエ2」には全く引き継がれない。それと同じです。
ただ、人生の「ドラクエ1」は「1人プレイ」ですが、人生の「ドラクエ2 結婚生活編」では、パーティの仲間が1人増えて、「夫婦2人」でのプレイになるのです。
手強い敵を倒して経験値を手に入れる。「経験値」は愛情であり、オキシトシン的幸福です。たいへんな出来事を一緒に乗り越えることで、愛情が深まるというわけです。
多くの夫婦は、結婚した時点で「愛情」というパラメーターがピークになっていると、勘違いしています。人生の「ドラクエ2 結婚生活編」において、「経験値」が初期化されてしまったことに気付かないまま、パートナーに様々な欲求をぶつけあうので、途端に夫婦関係の雲行きがおかしくなるのです。
オキシトシン的幸福とドーパミン的幸福を掛け算する
それは、セロトニン的幸福、オキシトシン的幸福、ドーパミン的幸福――この「3つの幸福」を組み合わせ、そして掛け算によって増やしていこう、という戦略です。
何か目標を達成して、それをクリアするとドーパミンが出る。また何か試練や問題が起こって、それを乗り越えるとドーパミンが出ます。
「やった、乗り越えられた!」と思ったら、また大変なことが起こって、それを乗り越えて、「やった、ドーパミンが出た! また頑張ろう」という気持ちになる。このように、「小さな課題」という階段を一段ずつ昇っていく――それは、「ドーパミンの階段」であり、「自己成長の階段」となるのです。
夫婦生活とは、夫婦で一緒にドーパミンの階段を昇ること。オキシトシン的幸福は、「人生のクエスト」「人生の階段」を昇るための経験値であり、エネルギーであり、武器でもあるのです。
互いに相手を尊重し、協力し、夫婦それぞれが自己成長することで、オキシトシン的愛情を強め、オキシトシン的幸福を手に入れていく。結果として、ドーパミン的幸福までも手に入れる。
これが、私の考える幸せな結婚生活です。
まとめ
恋愛で「男性が頑張る構図」が当たり前になっている背景には、結婚後の幸福度の違いという、見逃せない現実があります。
男性は結婚によって幸福度が上がりやすい一方で、女性はむしろリスクを背負いやすい――その差が、恋愛における女性の慎重さや選択の重みにつながっているのです。
大切なのは、「どちらが得か損か」を責め合うのではなく、互いの立場や不安、責任を想像し合うこと。
恋愛も結婚も、“スタート”にすぎません。信頼を築き、愛情を育て、試練を乗り越えながら、パートナーシップを深めていく。その積み重ねが、やがて本当の幸福へとつながっていきます。
「恋愛構造」ではなく、「信頼構造」へ――
それが、私たちが目指すべき関係のあり方なのかもしれません。